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味創り講師福井則雄のつぶやき(7)【開業支援】味の現地化いま昔 後編


鳥居式らーめん塾味創り担当の福井則雄です。

大成食品株式会社の商品開発マネージャーで、開業支援、運営支援事業も担当しています。

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【開業支援】味の現地化いま昔 後編 


前回予告した海外支援の思い出を書きますね。


まだ日本のラーメンが海外では今ほど浸透していなかった十数年前の話です。


依頼主は、国内で複数のラーメン店を経営し、成功させていたBさん。
α国への進出を計画していらっしゃいました。

現地の動向を業界紙等でリサーチした限りでは、Bさんがおっしゃっていた通り。

日本式ラーメンが流行の兆し。今後の需要増がおおいに期待できる、という明るいものでした。


初めての海外進出に賭けるBさんの情熱とご期待に応えられるレシピを開発しなくてはなりません。

当時、海外での支援経験はあったものの、α国では初挑戦。

下見に出向けば、仕入れられる食材や店舗の厨房設備、厨房で働くスタッフたちの技量…
きいていた話とはかなり違っていました。
Bさんのお店の味を現地で再現するのは難しい。
東京で食べてきたα国料理をもとに考えていたレシピも、使えそうにない。

仕切り直しです。

最初に聞いていた話と現地の状況が違うなんてことは、国内でもよくあります。
国内における現地化(東京で流行っている味を地方で出す場合)も、結構厄介なのですが。
それはまた別の機会に。

とにかく時間が惜しいので、さっさと次の案を考えることにしました。


与えられた条件のなかで、どんな味を創れば、地元のお客様にご満足していただけるのか。
研究のために、現地の繁盛店を食べ歩きました。

日本で買ったガイドブックに掲載されていた情報程度ではとても足りない。
日本人観光客向けの店が多いから、そもそも目的にそぐわないのです。
現地の関係者にも協力してもらって、地元の人でにぎわう店の情報を収集しては、食べに出かける、を繰り返しました。


食べ歩きはお腹をみたすための食事ではないので、事前調査が大切なんですよ。

開業支援鳥居式らーめん塾の宿題発表の時間にも、口を酸っぱくして言っています。

「食べ歩き 出かける前に下調べ!」

貴重な時間、お金、そして体を使うわけですから、しっかり勉強させていただかないとね!

視察していただきたいお店選びの基準は、「新店お断り」(笑)。

オープンして1年以内の新店は、流行っていてもまず対象外です。

独立開業を目指す人が繁盛店視察をすると、どうしても「今、マスコミで話題のお店」を選んでしまいがちですけどね。

都内でも毎年たくさんのお店がオープンします。
新しい店である、というだけでニュースバリューがあるもの。
マスコミやネットで話題になれば繁盛することはよくあります。
それでいて、1年ももたないところが、実はかなりあるんですよ。

私がめざすのは「30年続く繁盛店創り」。
最低でも30年はその地域で愛され続ける「老舗」を創りたい。
私のお客様、教え子には「老舗」の店主になっていただきたい。
ゆえに、少なくとも数年にわたって人気があるお店を選んで、勉強していただきたいのです。

長年にわたってそのお店が繁盛し、お客様に愛されている理由。
それが商品力なのか、サービスなのかは、行けばわかるし、毎回必ず学びや収穫があります。


話を元に戻しますね。

懸命に現地の繁盛店、行列店を大小問わず食べ歩くにつれ、現地の人が好む味と、日本で食べていたα国料理の味。
そして依頼主Bさんのお店のラーメンの味の違いが気になってきました。
スープの濃度、塩分、油、麺…
ことごとく、現地のほうが淡白で軽かったんですね。
スパイスや薬味、香草類の使い方も独特です。

日本で食べたα国料理店は「日本人好みの味に現地化」させたメニュー、味創りだったということです。


締切まで残りわずか。
試作の都合もあるし、はやくレシピを完成させないと、開店日に間に合いません。

食材、厨房設備等の事情に加え、日本のラーメンの認知度が事前の調査結果よりかなり低いとみて、現地化させた味創り、メニューで開店するのが賢明と判断しました。

視察を重ねるうちに、頭のなかでどんどんイメージができあがっていました。

何と何を何キロずつあわせたスープに○のタレをあわせ…
□なタイプの麺と具、スパイスをあわせれば…
確実に近隣の繁盛店、c店やd店の上にいける、と。


依頼主のBさんは、
「『
郷に入っては郷に従え』ということわざもありますから」
と私に一任してくださいました。

レシピでOKが出ると、次は試作と試食と並行して、厨房スタッフへのオペレーション指導。
猛烈な忙しさのなか、開店日を迎えました。



開店当日。
前宣伝の成果もあり、店の前には行列ができていました。
お店をあけたとたん、店内はたちまち満席に。

服装や持ち物などから察するに、想定していたよりも高所得者層の方が多くいらしてくださっていました。
こうしたお客様なら、
日本人が経営するお店の魅力をきちんと理解してくださるはず!
洗練された
外装や内装、家具、食器類、日本式の接客。
なにより、提供するラーメンやサイド
メニューの完成度は、近隣の競合店をはるかに上回ると自負していました。


しかし。
出されたラーメンを食べたお客様の表情が、もうひとつ冴えない。
笑顔がない。
「せっかく日本のラーメン店がオープンしたというから、わざわざ来たのに」
という落胆が、顔に出ている方も。



今思えば、当然の反応でした。

この日、いらしてくださったお客様が「日本人が経営する、日本のラーメンを出す」新店に期待していた「一番肝心なもの」が欠落していたのですから。


鳥居式らーめん塾の宿題発表の時にも、よく話すんですが…。

他のお客様がそのお店のラーメンをどう評価しているか?
ちょっと観察すればすぐわかるものなんですよ。

おいしければ、自然に笑顔になる。
連れがいれば
「おいしいね?」
「そっちのラーメンも味見させてよ?」
といった調子で、どんどん会話が弾むでしょう?
自然と店内がにぎわってきます。

店の外で観察するだけでもわかりますよ。
お店から出て来る人が笑顔だったとか、
楽しそうに話しながら次の目的地へと歩いていく、とかね。

商品がおいしくないとか、高いとか…
何らかの不満があれば、上記とはまったく正反対の反応になります。


途中色々あったとはいえ、万全の準備をして迎えた開店日。
店内は満席だったにもかかわらず、私にはとても「静か」に感じられました。
味の現地化を進めすぎて、「この街で最初の日本のラーメン店」というBさんのお店のもつ意義とコンセプトを曖昧にしてしまった。
開店直後に気づいてすみやかに軌道修正できたからよかったものの、今思い出しても冷や汗が出ます。

その後、ラーメン専門店を中心に数百軒以上の開業支援、運営支援を手がけました。
お客様の笑顔を創れなかった十数年前のあの日の記憶が、その後の私を戒め、奮起させてきたように思います。

<この項おわり>
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Author:製麺とラーメン店開業支援、運営支援のエキスパート 大成食品株式会社@東京都中野区


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